Kを発音したくなったり、ならなかったりする。

knowの中には今が、knightの中には夜が含まれています。そんなことより、私が好きな人はローマ字にした際Kで始まる人が多いんです(あるいは多いknです?)。そうそう、傘もKでした。" Kといえばカフカの「城」の主人公が・・・" と口にしがちだった多感な頃よりは私も大人になった、あるいは自由になったと思いたい一心で開設しています。同じことしか書けないなら同じことを増やそうと思います。

何をしてるのかね?君は?

 「ふざけんなよ、ばかやろー」と思う時、それをそのまま口にするのが、自分を多分に出しているという意味で極大値な怒声だとすると、「ちょっと待って下さい。それはどういうことですか?」というのは、極小値な怒声に相当するだろう。「何をしてるのかね?君は?」というのが、実にバランスの取れた怒声だとさっき思い浮かんで、こう思うに至ったが、この「何をしてるのかね?君は?」を使うべきだと思うことが最近まま起こっている。このバランス良いと思う怒声にはモデルがいて、7年程前にとある同僚が実際に口にして、はっとしたものだった。怒声とは書いたが、実際は感情は籠もりながらも実に抑制の効いた紳士的な響きでもって耳に飛び込んできた。新鮮に思いながらも、その後忘れていた。
 「そういう業界だから」と、ひと言で済まされることも多い流動性が高い職場を移動や異動で渡り歩き、もう5年を今の会社で過ごしているが、ここ1年程落ち着いていた流動性が最近高止まりしている。要するに、人が沢山辞めている。私にとっては不安はほぼ感じないが、周囲はそうでもないようで、人がやめることでまた人がやめるということも今後起こりそうな気配が漂っている。今度誰が辞めるのか、下手な天気予報よりは当たりそうな状態が続いている。この流動性という言葉を使いながら、これって都市や一部の国、観光地そのものじゃないのか?とも思い当たった。そして、すかさず会社を温泉旅館だと思ってみた。温泉旅館だからといって、それだけで楽にリラックスできるわけではない。貧乏旅行で、最低のコースを、ぎりぎりのチェックインで、ただ宿泊のためだけという消極的な理由で選択した温泉旅館だったら、と書いているだけでも疲労を覚えるくらいだ。出社するだけでも疲労を覚える会社は決して少なくないと思うが、この点では、会社もこういう場合の温泉旅館も似たようなものということになる。
 「立つ鳥跡を濁さず」というこれまた古い言葉がある。古いが全然死んでいない言葉に思える。というのも、今の職場がいくら流動性が高い場所だからといって、つまり、辞めることが決まったからといって、申し訳なさそうに遜ったり、その逆に居丈高になって、自分の仕事に対する姿勢や職場での態度を自室の中での所作同様にしていいわけではないが、そんな当たり前のことを、持ち出さないといけないような状況が続いているのも大きい。人の態度の急変を目の当たりにすることが増えている。そんなこともあってか、「何をしてるのかね?君は?」という言い回しを思い出したのかもしれない。ちょうど良いタイミングだった。毎日温泉旅館に連泊とはいえ、毎日チェックイン・チェックアウトしている気分でいれば、自ずとこういう言い回しに近付いてくるはずだから、それなりに感情の籠った言葉として、この言葉を口にできそうだ。
 しかしながら、「ふざけんなよ、ばかやろー」をもっと耳にしたい気持ちがないわけではないことに気付く。いつからこの言葉が、凶暴な、加虐的な一向に偏ったものとなってしまったのだろう?と思う。この言葉だって、バランス良いと捉えることができる視点や状況はあるはずだと思う。