Kを発音したくなったり、ならなかったりする。

knowの中には今が、knightの中には夜が含まれています。そんなことより、私が好きな人はローマ字にした際Kで始まる人が多いんです(あるいは多いknです?)。そうそう、傘もKでした。" Kといえばカフカの「城」の主人公が・・・" と口にしがちだった多感な頃よりは私も大人になった、あるいは自由になったと思いたい一心で開設しています。同じことしか書けないなら同じことを増やそうと思います。

旅先の動物

 旅先で見掛ける動物たちは皆、力強い存在に映る。「逞しく育ってほしい」という往年のCMの名ゼリフを思い出したが、彼らは言われなくとも逞しく、ドリフ未満の失笑しか誘わない。鉄道の車窓からは馬、牛、豚、鳥が放牧というのか、広大な緑の中にぱらぱらと姿を現しているのが目に入った。牛の二酸化炭素の排出量が問題という記事を何かで読んだことがあったが、牛の問題を持ち出すなら人間の問題ももっと持ち出せと思うような、もっと見なければいけないことをはぐらかすようなものを相当な比重で、自分が目にしていたと思った。少なくとも、この分量こそ自分にとっては問題だ。
 車窓の近くを並んで飛行しながら途中で分岐した二羽のカラスに、戦闘機みたいな格好良さを感じた。入国から程無く鳩の多さが印象的だったが、カラスもちゃんと登場してくれて楽しい気持ちになった。現地で知り合った日本人の方と治安や生活について話していて、緑が多いという話から動物が好きという話になり、日本にはペット不可の施設でも、周辺にはラットがいて面白い旨を告げたら「天然のネズミですね(笑)」と返ってきたのも楽しい気持ちをますます補強した。
 ネズミの話を終えて一人鉄道に乗り込むと先程の車窓の光景が広がった。その数時間後にはまた違う国に到着した。ホテルにチェックインすると、裏庭があり、その先には別のホテルの共用スペースと思しき場所が見えた。そこには、ネズミの話に呼応したわけではないだろうが、二匹の猫がいた。太っているというより肥沃という形容の方が相応しい、ふてぶてしいとは異なる堂々としたのんびりさ加減だった。日本にいても可笑しくない斑の柄とモノトーンの柄だったが、周囲の光景がそうは思わせないのだなと思った。そう考えたら、たとえ猫の周囲が、建物等人工物はもとより木や草もなく、空や土ばかりだったとしても、空気を通して見ている以上、日本とは違う猫に映るような気もした。考えたわけではなく、ふと「猫の基地」という言葉が浮かんで、悪くない言葉だと思った。
 見たことのない柄のカラスも目の当たりにすることになった。観光都市、美しい都市という形容の側面で、燃えないゴミ系のゴミが無造作に散らばったゴミ捨て場には、微かな食材の残りを綺麗に掃除するかのように、後頭部から首元にかけて白髪になったような柄のカラスが、「ヒャッ」と撥音的な鳴き声で動き回っていた。誰も注目していないのは、日本と同じで、撮影していたら、通り過ぎる人が「何故この人はカラスを撮影しているの?」のような視線で一瞥して去っていった。
 カラスといえば今朝は、再び鳩の存在感に満ちていた。スマホの頼りないアラーム音とは対照的に、部屋を貫通してくる「ポーポー、ポポー」という野太い声が耳を刺激してくれた。姿は目にしていない。この声は日本の鳩と同じだと思った。